錦帯橋は『木と石と鉄の芸術』

 今まで錦帯橋のことは、「釘一本使っていない錦帯橋」とか「木組の錦帯橋」と言うように表現されていました。本当にそうでしょうか…。
 結論から言いますと、錦帯橋は、「木と石と鉄の芸術」と言うことが出来ます。いや、そういうべきです。吉川広嘉をはじめとして創建に携わった多くの人々の技術水準と美的感覚のすばらしさに今更ながら敬服いたします。

[木]・・・

 錦帯橋は「木」でできたアーチ状の橋体の部分が大変印象的で「木」だけで出来ているような気がします。もちろん「木」を主体にして橋は造られていますが、本当に「木」だけで出来ているのでしょうか。

「石」・・・

 また、錦帯橋を横から見ると橋台は明らかに「石」で出来ており、この頑丈な橋台が石の「島」なればこそ長年の激流にも耐えることが出来れにそった流線形 ました。さらに橋の真上から見ると橋台は川の流に造られています。激流から橋台が受ける抵抗を減少させるための英知がうかがえます。また、橋台の上流と下流の川底にはぎっしりと石が敷き込まれ、簡単に橋台の根元がえぐり取られないようにしてあります。橋台は「木」との色調にまで配慮された暖色の石積みです。とくに、橋台は連続する木製アーチに直交し、両者はあらゆる角度からの眺めに絶えず最高の姿を示してくれます。

「鉄」・・・

 錦帯橋の橋体が本当に「木」だけで出来ているのでしょうか。ふと疑問に思い、実際に橋を渡ってみたり、橋の下から見ると、色々な所に「鉄」(正しくは「鉄」ではなく「鋼」と表現すべきでしょうが、ここでは一般的な表現として「鉄」と表示します)が使ってあります。 なぜ「釘」一本使っていないと説明する必要があったのでしょうか。「釘」を使っていると錦帯橋の価値が下がると思ったのでしょうか。大変不思議なことです。
 むしろ逆に「鉄」の利用方法に長けていたと言う方が正しいのではないかと思います。
 構造力学的に探求すると極めて巧に「鉄」が使われています。「釘」や「かすがい」という単純な接合材としての利用はもちろんです。究極的な利用は「巻金」です。「巻金」は組立アーチ(5本の組立アーチで1スパンの橋体が出来ています)そのものの実現に決定的な要素として考案されました。「巻金」は下図のようなC型の鉄材です。組立アーチは少しずつずらしながら上下に重ねられた多くの木製の桁材で出来ています。しかし重ねただけではばらばらになります。これを要所要所で締め付けるためにこの「巻金」が使われました。「巻金」は2個づつ対にして使われています。「巻金」のおかげで組立アーチはただ単に重ねた桁材の数十倍、数百倍にもなります。「巻金」は錦帯橋で最も重要な「鉄」と言っても過言ではありません。実際に「巻金」を取付けるにはちょっとしたアイデアが必要です。皆さん考えてみてください。
 これは推測ですが、錦帯橋が創建された1673年の姿は現在の錦帯橋よりもはるかにスマートであったと断言できます。それは今日見られる、「鞍木」(下から見ると「V」の連続した形に見える補強材)は1678年以降に取付けられたという記録から言うことが出来ます。
 すなわち、創建者は相当この「巻金」で補強された「組立アーチ」に自信にあったものと推察されます。従って錦帯橋を語るとき「鉄」を語らずして創建者の意をくむことは出来ないはずですし、「鉄」なくしてはこのような芸術的な姿は到底実現することが出来なかったと思います。

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